「――それでは、本日はここまで!」
「ありがとうございました!!」
下校時刻を大分過ぎ、テニスコート周辺以外はほとんどひと気の無くなった校内に、テニス部員達の声が響く。
時刻は既に19時を少し回っていた。
太陽はまだ地平の辺りに薄っすらとその光を残していたが、頭上に広がる空は完全に夜の色だ。
代わりに燈りだした人工的な光が、辺りをひっそりと照らし始めていた。
解散後、部員たちは手際よくテニスコートの後片付けをし、急いで部室へと戻っていく。
「活動時間の延長」という特例は、19時半までに全員が完全下校するという条件付きでもあったのだ。
また、一般下校時刻以降は職員室以外の校舎内への立ち入りも禁止されていたので、は、帰りは校舎内にある女子更衣室が使えなくなっていた。
そのため、通常レギュラーが着替え用の部屋として使っているミーティング室で先にが着替えを済ませ、その後に交代でレギュラーが着替える、という形を取っていた。
は急いで部室に戻ると、慌てて汗だくになったTシャツと体育のハーフパンツを脱ぎ、制服に着替えた。
ネクタイは結ばないまま腕に掛け、脱いだものを袋に押し込むと、自分の荷物を掻き集めて、大慌てで部室の外に飛び出す。
しかしまだ、次にこの部屋で着替えるはずのレギュラー達は戻ってきていなかった。
先にが着替える事もあり、レギュラー達はいつもぎりぎりまでテニスコートでいろいろな確認をして、ゆっくりと帰ってくるのだ。
彼らを待たせずに済んだらしいことに、はホッと安堵の息を吐く。
部室の前でが彼らを待っている間、隣の第2部室で着替えている一般の部員たちが、着替えを終え次々に帰っていく。
それを見送り、笑顔で挨拶をしていると、やがてレギュラーメンバーたちが部室へと戻ってきた。
「お疲れ様です! すみません、いつも先に着替えさせてもらっちゃって……」
そう言っては頭を下げる。
すると、彼らは一様に笑顔を見せた。
「気にしないでください、レディファーストですよ」
「そうそう、レディなんとかじゃ」
柳生と仁王の彼ららしい言葉に、思わず笑みが零しながら、もう一度頭を下げる。
そして、邪魔にならないようにが部室のドアから離れると、皆は次々に部室へと入って行った。
次々と入っていくレギュラーの面々に、は一人ずつ「お疲れ様です」と声を掛ける。
すると、最後に近づいてきた彼の――真田の姿に、の心がとくんと鳴った。
平静を取り繕おうと試みたものの、顔は多分赤くなっているに違いない。
それを悟られないように、俯き加減では彼に声を掛けた。
「――お疲れ様です、真田先輩」
挨拶をし、再度深深と頭を下げる。
すると、それまで厳しい「副部長」の顔をしていた彼は、ふっと口の端を緩めた。
「……こそ、お疲れ様だったな」
そう言って、彼はの頭に軽く触れる。
その手のひらが、あたたかくて優しくて、の心臓の高鳴りが更に増した。
は、恥ずかしいような、嬉しいような気持ちを押さえ込むように、荷物を抱き締めていた双腕に力を込める。
真田はそんなを微笑ましそうに見つめ、小さな声で囁いた。
「すぐに着替える。悪いが、少々待っていてくれ」
部活の時の迫力ある声とは違った、とても優しい声色が響く。
それは、の動きを硬直させ、顔を完全に朱色に染め上げた。
「……はい、あの……ま、待ってます」
小さな声でそう返し、は俯く。
すると、彼もまた、咳払いをしながら帽子のつばを下げて、表情を隠してしまった。
どうやら、が照れているのに気づいて自分も恥ずかしくなったらしい。
「……き、着替えてくる」
そう言い残し、真田は慌てて部室の中へと姿を消した。
部室の扉が閉じた音が響くと、は大きく息を吐いて、部室の外壁に背を預ける。
つい先ほど真田に触れられたばかりの頭が、まだ熱を持っていた。
彼が紡いだ「お疲れ様」や「少々待っていてくれ」なんて何気ない言葉ですらも、まるで口説き文句のような甘さを感じてしまい、なかなか耳から離れない。
(ほんともう病気でしょ、私……)
体の熱や心臓の高鳴りを落ち着かせるように、はまた大きな息を吐く。
交際を始めたと言っても、別にデートをするわけでもなければ、特に恋人らしい事をするわけでもない。
強いて言えば、部活帰り、がちゃんとバスに乗るまで見送ってもらうことくらいだろうか。
しかしそれだって、「恋人だから特別に」というわけではないような気がする。
例え彼と特別な関係ではなかったとしても、彼の副部長としての責任感や、正義感から、多分彼は同じことをしてくれたのではと思うのだ。
同じ年頃の普通のカップルと比べてみれば、本当に付き合っているのか疑われそうなほど、二人の間に特別なことは何一つ無い。
けれど、以前のように彼の気持ちや態度に怯えることなく、その微笑みや言葉を素直に受け取る事ができる――それだけでは充分幸せだった。
もしかして、今自分は世界で一番幸せな人間ではないかとすら思うほどに。
(今、「世界で一番幸せな人大会」とかあったら、私今ダントツで優勝できると思うなぁ。ていうか、この状態がずっと続いてくれれば、立海テニス部の関東大会の記録だって追い抜いちゃえるかも!)
そんな能天気なことを考え、無意識にはへらっと頬を緩める。
――その時。
「お疲れ、」
「さん、お疲れー」
どこからか声を掛けられ、はびくっと顔を上げた。
その瞬間目に飛び込んできたのは、隣の第2部室で着替えていた数人の他の部員たちの姿だ。その中には、同じクラスの笹岡もいる。
不意の出来事だったので、はぱちぱちと目を瞬かせるていると、笹岡が不審そうに眉根を寄せた。
「……、何ポカーンとしてんの? 大丈夫?」
彼のその言葉に、はっと我に返る。
レギュラー全員が部室に入り、完全に油断してしまっていた。
人の目など無いと思っていたから、自分の感情を隠すことなく思い切り表に出してしまったけれど、まさか他の部員達に見られていたなんて。
は、恥ずかしくなりながらも慌てて頭を下げた。
「あ、ご、ごめん、お疲れ様!」
そう言って頭を上げ、わざとらしく笑って、はその場をごまかす。
「お疲れ様ーじゃあ、また明日!」
「お疲れー」
時間も遅いからか、部員たちは挨拶をすると足早に帰っていく。
第2部室の電気が消えているところを見ると、彼らが最後のようだ。
(あ、そうだ。真田先輩を待っている間に、隣の部屋の窓の鍵の確認しとこうかな。そしたら、先輩が出てきたらドアの鍵かけてすぐに帰れるし)
がそんな事を思っていると、ふいに視線を感じた。
はっとして振り返ると、そこには先ほど帰ったと思っていた笹岡の姿があった。
「どうしたの、笹岡君」
不思議に思い彼に声をかけると、笹岡は、にやっと笑っての近くに寄って来た。
そして。
「今さっき、めっちゃニヤついてたよな。……何考えてたの? もしかして好きなヤツのこととか?」
彼は、いきなりとんでもないことを口にした。
唐突な彼の言葉に、はかあっと顔が熱くなる。
「な、何言いだすの急に!」
「だって、今めちゃくちゃニヤついてたもん。マジきめぇくらい」
あっけらかんと言って、彼は更にからかうような笑みを浮かべた。
あっさり言い当てられ、何も言い返せなくなって、はただ顔を熱くする。
「……」
頬を染め、言葉も無く視線を逸らしたの様子に、彼は一瞬目を点にする。
しかし、すぐにその表情が崩れた。
「うっわ、わっかりやすっ! 、好きなヤツいるんだ」
身近なゴシップに興味が湧いたのか、彼は目を輝かせながら好奇心を露にした。
どうやら、笹岡はが真田と付き合っていることは知らないらしい。
と真田の仲のことは少しずつ部内でも広まりつつあるが、やはり真田という人物の性格上、ただの冗談だと思う者は少なくないようだ。
最も笹岡の場合は、そもそもそんな話すら知らないようだけれど。
「なあなあ、誰? 誰?」
「えっと、……あの」
笹岡に詰め寄られ、は赤い顔を更に真っ赤にして身を縮めた。
別に真田とのことを隠すつもりは無かったのだが、彼の勢いに押されて、上手く言葉にすることが出来ない。
黙り込んで何も言えないに近づくと、彼は内緒話をするように口元に手を添え、小さな声で次々に質問を浴びせた。
「俺の知ってるヤツ? テニ部? それともクラスのヤツ?」
「さ、笹岡君……」
彼の好奇心満々の問いに、は困ったように眉をひそめる。
しかしそんなことはお構いなしに、彼は更に突拍子もないことを言いだした。
「あ、分かった! もしかして、切原だろ!? と切原って、仲いいもんな。テニス部のマネージャーになったのも切原に頼まれたからなんだろ?」
「ええ!? ち、違うよ!!」
切原の名前が出て、は慌てて首を振る。
すると、笹岡はきょとんとした顔で尋ね返した。
「あれ、違ったっけ? 切原が、を勧誘したって聞いたけど」
「あ、うん、それはそうなんだけど」
「だろ? あ、切原のこと好きだったから引き受けたわけだ」
「だ、だからそれが違うんだってば!!」
彼の勘違いに、は更に必死で首を振った。
しかし、があまりにも必死で否定するので、逆に彼はそれが図星だと思ったらしい。
ニヤついた笑みを浮かべ、うんうんと首を振って、笹岡は一人で勝手に納得してしまった。
「やっぱり切原かー。俺、ちょっと怪しいと思ってたんだよなー。お前ら、教室でもよく喋ってるし」
「きょ、教室で喋ってる時は、大抵も……さんも一緒だからね!!?」
「ごまかさなくていーって」
完全に勘違いをされてしまっている。
けれど、そんな勘違いは切原にも真田にも非常に失礼だ。
恥ずかしいが、真田と付き合っていることを彼にちゃんと説明するしかないと、は腹を括る。
「あのね、本当に違うの、切原君は大切な友達で……私は……私が好きなのは……」
真田、と言おうとしても、恥ずかしくてなかなか言葉に出来ない。
そういえば、自分から真田との事を誰かに話すのは初めてのような気がする。
しかし、この勘違いだけは絶対に訂正しなければならないと、は必死で声を振り絞ろうとした。
「さ……さな――」
「いーっていーって、他のヤツに言ったりしないし! まあ切原ってカッとなりやすいけど基本いいヤツだもんな」
真田先輩、と言おうとしたの声を、調子付いた彼が遮る。
全く話を聞いていない笹岡は、更に的外れなアドバイスを続けた。
「でもさ、切原が好きなんだったら、部活の帰りを真田副部長に送ってもらうのはやめた方がいいと思うぜ? 幾ら遅くなるからって言ってもさ、あの人だって男だし、切原
が勘違いしそうじゃん?」
「や、だからね、真田先輩に送ってもらうのは」
「まあ、真田副部長が送るって言ってるのを断るのはキツイよな。どうせあの人『このような夜道を婦女子1人で帰すわけにはいかぬ!』とか何とか言って無理矢理送ってるんだろうけど、断ったら怒られそうだしな。部活でも怒られてるのに、部活外でまで怒られンのは嫌だよなー」
そう言って、彼はまたハハッと笑う。
見当違いな憶測をし、真田の好意をまるでありがた迷惑な行為のように言う笹岡に、はだんだん苛立ちを感じ始めた。
真田が誤解されやすいことは分かっているし、彼がそれをわざわざ1人1人に訂正しないことも知っているが、大好きな彼がこのような言われ方をされて黙っていられるほど
、は冷静ではない。
「あ、どーせなら、切原に送ってもらえば――」
「もう、笹岡君!! 話聞いてってばー!!」
思わず、大きな声で叫んだ。
その声に驚いたらしい彼は、目を見開いて動きを止める。
は、彼がやっと暴走を止めてくれたことにホッとしたが、思い切り大きな声を出したので次の言葉が続かず、肩で息をして呼吸を整えた。
そして、少し眉をひそめながら、は腕に抱き締めていた荷物をぎゅっと抱き締め、彼に問い掛ける。
「笹岡君は、真田先輩のこと嫌いなの?」
「……いや、別に嫌いまでとは言わねえけど……」
「じゃあ、なんでそんな言い方するの? 今、結構酷いこと言ってたよ」
の反応が予想外だったのか、笹岡は少し驚いたような表情を見せた。
そして。
「嫌いじゃねえけど、苦手だし……正直、あんま関わり合いにはなりたくねえ」
そう言うと、彼は面倒くさそうに頭を掻いて、から視線を逸らした。
「どうして? テニスあんなに強いし、いつだって部活のためにものすごく力尽くしてるのに」
「どうしてってって言われてもな……真田副部長って怖ぇーもん。すぐ怒鳴るし、なんつーか自分の正義を人に押し付けるようなとこ、あんじゃん? それでものすげえイラっとすることあるしな。テニスは確かに上手いどころの話じゃねーし、俺にゃ引っくり返ったってあの人の域には到達できねえだろうから、それは尊敬してるさ。でも、それとこれとは別モンだろ」
先ほどのふざけた表情は消え去り、真面目な顔つきで、笹岡は淡々と言葉を吐く。表情からして、それが彼の本心なのは間違いないだろう。
部員の中には真田を怖がっている人もいることは知っていたが、それでも皆、心の奥底では彼を慕っていると思い込んでいた。
こんな風に感じている人も居るのだと、は少なからずショックを受けた。
「……先輩は、すごい人だよ。怖いのは、それだけ真面目に部活に取り組んでるってことでしょ」
「まあ、そうかもしれねーけど……でも苦手なもんは苦手。つか俺、も副部長のこと苦手なんだと思ってた。違うんだな」
再度を見て、笹岡は意外そうに呟く。
そんな苦手意識の仲間に勝手に入れられていたかと思うと、はそれだけでなんだかムカムカした。
「なんでそう思ってたのかは知らないけど、私は違うよ。勝手にそんな風に思わないで」
「いや、いつも結構頑張ってる割には怒られてるし、ちょっと前まで真田先輩にかなり冷たく当たられてたじゃん、お前」
ちょっと前までというのは、真田が自分のことを避けていた頃の話だろう。
確かにそんな時期もあったけれど、あれは彼が自分を慕ってくれていたが故の話だ。
そんな事情を笹岡が知るはずも無いが、はなんとか少しでも彼の誤解を解きたいと、必死で言葉を紡ぎ始めた。
「それは……その、いろいろ事情があるの。でも真田先輩は本当にすごい人なんだよ。怒るのだって理由が無きゃ怒らないし、自分のこと以外も気を配ってるからついつい口
だしちゃうかもしれないけど、本当はものすごく優しい人なのに……」
脳裏に、いつもの優しい彼の姿が浮かび、胸が痛んだ。
本当の彼を知っている人は、もしかしたらものすごく少ないのかもしれない。
「笹岡君は、真田先輩のこと誤解してる。もうちょっと、真田先輩の事ちゃんと見てよ」
強い口調でそう言って、は笹岡の目をじっと見つめた。
その雰囲気におされたのか、笹岡は気まずそうな顔をして、その視線を逸らした。
「な、なんだよ。ならお前は、本当の真田先輩の姿とか、知ってんのかよ」
「……全部じゃないかもしれない。けど、多分……笹岡君よりは知ってると思う」
彼を知ったのはこの間の5月だけれど、まだ出会って数ヶ月しかたってないけれど――それでも、真田を上辺だけでしか見ていないであろう彼よりは、ずっと。
そんなことを思いながら、強い眼差しでは笹岡を見据えた。
「なんだよ、それ……お前、つい最近マネージャーになったばかりのくせに知ったかぶりしやがって……」
笹岡は、小さな声で呟いた。
しかし、次の瞬間はっとした顔で、を見る。
そして――。
「お前、妙に副部長のこと庇うのな。もしかして、お前が好きなのって切原じゃなくて――真田副部長?」
彼はいきなり、核心を突いた。その瞬間、どくんと心臓が高鳴る。
は、脈打つ心臓をぎゅうっと押さえつけるように、荷物を抱え込んだ。
――恥ずかしいけれど、隠す必要はない。
「……そ、だ、よ。ていうか……付き合って……る」
火照りを増した顔をゆっくりと縦に振りながら、掻き消えそうな声を振り絞った。
そんなの様子をじっと見ていた笹岡は、一瞬目を見開いて動きを止める。
そして。
「付き合って……って、マジで? あの? 真田副部長と?」
まるで信じられない事でも聞いたかのように、彼は問い返してきた。
「……本当だってば。こんなことで、嘘なんかつけないよ」
更に顔が熱くなった。
もうまっすぐ彼の顔を見ることも出来なくて、は顔の半分を部活着の入った袋に埋める。
も笹岡もお互い一言も喋らず黙り込んでしまい、一瞬辺りが静かになったが、やがて――笹岡は、ははっと渇いた笑いを漏らした。
「なーんだ、そーいうこと。なるほどね、あの真田副部長もやっぱり男ってことかぁ」
軽い調子で言いながらも、彼の言葉の内に少し冷たいものが混じっているような気がするのは、気のせいだろうか。
「そういやお前、今日の部活ん時も真田副部長の事庇ってたもんなー。まあ、彼氏だったら必死で庇うわな」
彼がからかっているのか、馬鹿にしているのか、判断がつかない。
何を考えているのかわからない彼の声はの心を凍りつかせたが、それでも必死では言葉を続けた。
「か、彼氏だからとかは関係ないよ。私は、真田先輩があんな人だから、好きになったんだよ」
「へーへー、お熱い事で。副部長、この時期に彼女作るなんて余裕だよなあ」
――今の言葉には、確実に棘があった。やはり勘違いじゃない、笹岡は真田と自分のことを、とても冷めた目で見ている。
は、眉をひそめて顔を上げた。
そんなに、彼は更に皮肉を浴びせる。
「幸村部長は入院中だってのに、ちゃっかり自分は彼女なんか作ってるなんて、ちょっと真田副部長を見る目が変わったわ、うん」
「そんな言い方しないで! 真田先輩は部活に私情を持ち込んだりしないよ!!」
「マネージャーに手をだすのは、私情を持ち込んだとは言わないわけ?」
笹岡の顔は笑っていたが、目は決して笑っていなかった。
彼の中で、真田の印象がどんどん悪くなっていっているような気がして、の焦りはどんどん増していく。
どうすれば彼の誤解を解くことが出来るんだろう――
分かってもらいたい、けれど上手く言葉が見つからない。
が言葉もなく言いよどんでいた、その時だった。
部室のドアが開く音が響き、突然「彼」の声が聞こえた。
「――それ以上、彼女を責めるな」
突然の声に、二人は同時に声のした方を見やる。
部室から出て来たのは、渦中の人物、真田だった。